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核兵器禁止条約と宗教者の活動―「ヒバクシャ国際署名」の取り組み・完

2021年3月19日
吉川徹忍(浄土真宗本願寺派僧侶)

 
はじめに
 「私たちは自らを救うとともに、私たちの体験を通して、人類の危機を救おうという決意を誓い合った」(日本被団協「結成宣言」、1956年8月)。この「宣言」の願いは仏教の教えと響き合う。菩薩道とは自ら悟りを求めるとともに、慈悲の心で他の一切衆生をも救済しようとする利他的な働きでもある。
 2017年7月、「核兵器禁止条約」が成立し、12月、採択に貢献した「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」にノーベル平和賞が与えられた。受賞講演でサーロ―節子さん(13歳の時、広島で被爆)は「核兵器は必要悪ではなく、絶対悪」と語った。
 前年2016年4月、被爆者たちは、「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」(以下「ヒバクシャ国際署名」)を始めた。「ヒバクシャ国際署名」は、2021年1月13日、最終集約1370万2345人分の署名を国連に提出した。核兵器禁止条約が発効したのは、9日後の1月22日だった。宗教界(主に仏教界)の取り組みを報告する。
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核兵器開発の始まりと使⽤

 本年2021 年1 ⽉22 ⽇に発効した最新の核軍縮条約で⼈道的観点から核兵器を禁⽌する(問い直す)「核兵器禁⽌条約」はどのような背景から条約作成・成⽴・発効することに⾄ったのだろうか。
 振り返る前に、核兵器⼤国の⼀つである⽶国の⼤統領に核兵器禁⽌条約を推進する追い⾵になりそうなバイデン⽒が条約発効直前の1 ⽉20 ⽇に就任した。いち早く広島市の松井市⻑と⻑崎市の⽥上市⻑は連名でバイデン新⼤統領の被爆地訪問を要望する書簡1を1 ⽉21⽇に送っている。また、バイデン新⼤統領は早速ロシアのプーチン⼤統領と電話会談し、新START(新戦略兵器削減条約)の期限更新について1 ⽉26 ⽇に原則合意した。⽶国⼤統領が交代したことで、核軍縮の進展という期待をいだかせる。なぜなら、バイデン新⼤統領は2020 年の⼤統領選挙期間中に「⽶国は『核兵器のない世界』という究極の⽬標を改めて約束すべき」との声明を発し、オバマ元⼤統領の「核兵器のない世界」のビジョンを踏襲する意志や新⼤統領が上院議員時代から核問題に⾼い関⼼を持ち、多くの場で発⾔をおこなってきたからである。
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「核兵器禁止条約」発効へ

 核兵器の禁止に関する条約(核兵器禁止条約Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons : TPNW)が、中米にあるホンジュラス共和国の批准(20201024日)により、条約発効に必要な批准国数50カ国を達成し、2021122日に発効することが確定した。軍縮・核兵器に関する核兵器禁止条約は、201777日に国連総会で採択されてから、3年半で発効することになった。
 この条約は、前文と20条の条文(暫定訳:外務省)で構成されている。前文では、「……核兵器の使用による壊滅的で非人道的な結末を深く憂慮し、……核兵器を完全に廃絶することが必要であること、……核兵器が継続して存在することがもたらす……危険がすべての人類の安全に関わること……核兵器の壊滅的な結末は、……国境を越え、人類の生存、環境、社会経済開発、世界経済、食料安全保障並びに現在及び将来の世代の健康に重大な影響を及ぼ[すこと]……核兵器の使用の被害者(被爆者)[や]……核兵器の実験により影響を受けた者の容認し難い苦しみに留意し、……核兵器の全面的な廃絶の……公共の良心の役割[のために]……国際連合、国際赤十字、赤新月運動、その他、国際的及び地域的な機関、非政府機関、宗教指導者、議会の議員、学者並びに被爆者がおこなっている努力を認識して」協定した条約であることが示されている。
 このコラムでは、人道的視点から核兵器廃絶の実現を目指すひとつの道として、核兵器禁止条約について、皆さんと一緒に考えていきたいと思う。
※[]…著者追記
 
     2020年11月6日

 「核なき世界基金」を支援する会 広島本部 竹内 秀晃